知らないと損をする筆跡鑑定の話 第35話





【弁護士先生の筆跡鑑定への信頼性は】




  ■筆跡鑑定に懐疑的な司法関係者が少なくない。

  弁護士さんに限らず、司法関係者の筆跡鑑定についての評価は、必ずしも良いものと
 はいえません。事実、私の鑑定書を採用して勝訴した弁護士さんから、お世辞も含まれ
 ているかも知れませんが、つぎのような言葉を聞くことが多いのです。

  「私は従来筆跡鑑定については懐疑的でしたが、根本さんの鑑定書をみて目からウロ
 コが落ちた気持ちでした。」これは、非常にありがたい言葉ですが、このことは、僭越
 ながら、この弁護士さんにとっても良いことではないかと思います。

  それは、この弁護士さんから再度鑑定を依頼された場合、この弁護士さんは、私の鑑
 定書に絶対的な信頼をもって闘うでしょうから、一般論として勝率は高くなるものと思
 います。

  つまり、同じ主張をするにも十分な自信をもって主張する場合は、そうでない場合に
 比べて、説得力や影響力が違うと思うからです。

  そのような意味合いから、私はかなり多くの弁護士さんが鑑定に懐疑的であるのは残
 念なことだと思います。是非、私どもの鑑定書を知って頂いて信頼して頂き、より強い
 自信をもって裁判に臨んでいただきたいものと希求しています。


  ■かつての最高裁の見解も悪影響か?

  問題は、裁判官を始めとして司法関係者の多くが、何故、筆跡鑑定について懐疑的に
 なっておられるのかということです。これには、いくつかの原因があるものと思います。

  第一には、かつての最高裁判所の筆跡鑑定についての見解に原因があるのではないか
 と思います。

  それは、ある脅迫事件に関して、有罪となった被告の弁護士が「4人の鑑定人による
 伝統的筆跡鑑定方法は、勘と経験を頼りにした客観性・科学性のないもので証拠として
 価値がない」と主張して上告したものです。それに対する最高裁の判断はつぎのとおり
 でした。

  「いわゆる伝統的筆跡鑑定方法は、多分に鑑定人の経験と勘に頼るところがあり、こ
 との性質上、その証明力には自ら限界があるとしても、そのことから直ちに、この鑑定
 方法が非科学的で、不合理であるということはできないのであって、筆跡鑑定における
 これまでの経験の集積と、その経験によって裏付けられた判断は、鑑定人の単なる主観
 にすぎないもの、といえないことはもちろんである。したがって、事実審裁判所の自由
 心証によって、これを罪証に供すると否とは、その専権に属することがらであるといわ
 なければならない(後略)」
 [最高裁昭和41年2月21日第二小法廷決定 昭和40年(あ)第238号脅迫被告事件]

  これは、筆跡鑑定は、認められるという点ではありがたいのですが、「いわゆる伝統
 的筆跡鑑定方法は、多分に鑑定人の経験と勘に頼るところがあり、ことの性質上、その
 証明力には自ら限界があるとしても……」というくだりが、以後、司法関係者の基本認
 識を作り上げた一因なのではないだろうかということです。

  これについては、過去の科捜研OBなどの鑑定書は、かなり未熟なものもあり、一面
 の真理ではありますが、あくまで一面であり、狭い見方であると、このメールマガジン
 でも何回も述べてきました。


  ■科捜研OBの形式ばかりの鑑定書の弊害

  第二に、過去の事案で未熟な鑑定書を経験された先生は、鑑定書に対し、懐疑的にな
 ってしまうということも多いようです。特に、年齢の高い(経験豊富)な弁護士さんに、
 そのような意見を聞くことが多いからです。

  事実、私も、元科捜研の鑑定人のつくった鑑定書を見て、何回か「こんなものが鑑定
 と言えるのか?」と驚いたことがあります。それらは、概ね大変なボリュームがありま
 すが、中身は、例えば「文字のサイズ」ばかり書き連ねてあって、肝心の文字の分析や
 考察はほとんどないか、あっても極めて表面的というようなものでした。


  ■裁判官も使いやすい?レベルの低い鑑定書

  第三には、これは私の経験からの印象ですが、裁判官の中には「鑑定書
 は読んでも分からないから、結論だけをサラッと読む」という裁判官も少なくないので
 はないかということです。

  第四には、これも私の印象からの推測ですから、間違っているかも知れませんが。裁
 判官の中には、ご自分の心証を大事にして、鑑定書が合致しない場合には、「鑑定書に
 は限界があるから……」と、それを言い訳の一つにするということがあるのではないだ
 ろうかということです。

  というよう様々な理由で、「筆跡鑑定は信頼性が低い」という見方が広まったのでは
 ないのかと考えています。しかし、過去に何度か説明していますように、筆跡鑑定とは、
 そんなに信頼できないものではありません。一読、瞠目するような鑑定書も無いわけで
 はありません。

  いずれにせよ、このような誤解は、鑑定人として非常に残念なことです。また、わが
 国の司法にとっても由々しき問題であると思います。

  この解決の一つは、鑑定人のレベルアップです。その一環として、筆跡鑑定人を資格
 化するということが考えられます。私は資格制度で全てが解決するとは思いませんが、
 一つの重要な方法だとは思います。

  しかし、私は、現状は、まずは高品質の鑑定書をつくり、信頼して頂ける弁護士先生
 を一人でも増やしていくことが当面の使命だと認識しております。

                                 この項終わり



 
一般社団法人・日本筆跡鑑定人協会   株式会社・日本筆跡心理学協会 
代表 筆跡鑑定人  根本 寛(ねもと ひろし)
東京都弁護士協同組合特約店
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