筆跡鑑定 メールマガジン 第11号








★☆★「知らないと損する筆跡鑑定の話」第11号 ★☆★



◆恐ろしいクレジット会社の実態



  今回は、一年ほど前に起こった未解決の生々しい事件をそのままお伝えします。先生方
  には、現実の問題として理解して頂ければと思います。プライバシー保護の観点から、
  当事者の姓名の1文字と、職業だけは変更していますが、その他は事実そのままです。


  私は、一介の筆跡鑑定人ですが、社会との接点は出来るだけオープンにしているせいか、
  実にいろいろなご相談が飛び込んできます。過去にも、暴力団との関係から自殺した自
  衛隊員の家族からの相談などもありました。


  発端は、税理士を営む40歳代半ばの男性からの相談でした。それは、東京、新宿・歌舞
  伎町のボッタクリバーで大金をふんだくられ、クレジットカードで決済したが、この代
  金は、署名が偽造なので取り戻すことは出来ないのかという相談でした。


  その被害者「大野宗次」(1文字のみ仮名)さんは、いい気分で深夜の歌舞伎町を歩いて
  いました。先ほどまで、地方に住んでいる小学校時代の親友と偶然出会い、一杯やって
  積る話に花を咲かせていたのでした。35年ぶりの邂逅だったそうです。

  その大野さんに、黒人の大男が笑いかけてきました。「おにいさん、一杯飲んでいかな
  い? 千円でオーケーだよ」。呼び込みです。普段の大野さんなら相手にしないでしょ
  う。しかし、その日は気分もよく一杯飲んでもいいかなと思ったそうです。


  「千円では済まないだろうが、明日は土曜で休みだし、1万円くらいならいいかなと思
  ったのです」終電も終わっていることだし、1時間も時間つぶしをして始発で返るのも
  いいかと考えたそうです。本当は、2駅ほど歩いて帰ろうとしていたのです。


  ◆深夜の歌舞伎町でボッタクリバーに誘い込まれた。


  大男に連れられて、ビルの地下の店に入りました。ごく普通のスナックのような雰囲気
  だったとそうです。ただ、客が一人もいません。ところが、女の子が10人もいます。そ
  れも、白人やら東南アジア風など国際色豊かだそうです。


  メニューを見せられました。料金は千円から2〜3千円程度で普通でした(女の子は多
  いけど普通の店らしい)。ちょっと不安になっていた大野さんは安心しました。

  客は、大野さん一人だから、4、5人の女性に取り囲まれました。仕方がないので、3人
  の女性にカクテルを奢りました。「確か一杯500円ほどのものでした」。その内、他に2、
  3人の客も入ってきて店は賑やかになったそうです。


  大野さんは、ワイン4、5杯を飲んだそうです。「注文するたびにボーイがカウンター
  に行って一杯づつ注いで来るのです。普通ならボトルを持ってくるのに変なシステムだ
  なと見ていました。酔ってはいましたが、その程度の注意力はあったんですね。」


  その内、猛烈な睡魔が襲ってきました。「ワインは普段からボトル1本くらいは飲んで
  いますから、酔いの程度は分かっています。あんなに猛烈に眠くなったのは、何か入れ
  られたとしか考えられません」。シャンパンを開けていいかと聞かれ、朦朧とした頭で
  承知したところまでは覚えていたそうです。


  気が付くと朝の5時過ぎになっていました。大野さんは勘定を頼みました。勘定書きを
  見てビックリ。何と17万円になっていました。女の子のドリンク500円が3杯、シ
  ャンパンが1本、ワイン5杯でそんな金額になるわけはないと文句を言いました。


  ◆身の危険を感じやむなくクレジットに署名する。


  しかし、黒人の大男と女性に取り囲まれ、まったくラチがあきません。(これはまとも
  な店ではない。ともかく無事に店を出ることが先決だ。クレジットのことは、そのうえ
  で考えよう)。大野さんはそう考え、クレジットで支払いを済まし帰宅したそうです。


  帰宅してすぐクレジット会社に電話しました。「責任者を出してくれ」と言っても応対
  の女性が2、3人変わるだけでまったくラチがあかなかったそうです。それでも解約担
  当と名乗る男性に解約の申し入れをしました。


  この時点でカード使用の形跡はありませんでしたが、遅れて届くこともあるといわれ、
  早く手を打ちたかったので、使用記録が届いたら連絡して欲しいと言いました。しかし、
  それは出来ない、パソコンで自分で調べてくれと言われ、やってみたが解約したのでロ
  グインできません。


  ともかく、請求が来るのか来ないのか不安でしたが、取りあえず解約をしたことだし、
  「要望があれば店の調査に入ります。心配はいりません」との調査係の言葉などもあり
  じっと我慢をしていたそうです。


  約一ヶ月半後の11月末に、17万と9万円の2枚の請求が上がってきました。9万円は、
  まったくサインした覚えがありません。すぐにクレジット会社に連絡し調査を依頼しま
  した。担当者は、調査はアメリカから書類を取り寄せるので2カ月から4カ月ほど掛ると
  のこと。そんなバカなと思ったがともかく調査を依頼しました。17万は決済し、9万円
  は支払いをストップしました。


  すぐに新宿警察に行きました。警官がクレジット会社に電話をしました。「本人がサイ
  ンをしたと認めていないものを支払うのはおかしいではないか、それは契約書に書いて
  あるのか」という警官の質問に、クレジット会社の担当者は「契約書にはないが前例が
  できると困るので対応できない」という意味の返答だったそうです。


  ◆警察署もぼったくりバーと認める


  警察は「本人の訴えだけでは取り上げられない、目撃者が必要だ」とのことで事件には
  出来ないとのこと。しかし、「これは明らかにぼったくりバーだ。我々もこの手の店を
  取締りたいと努力している。あなたも何とか払わないで頑張ってくれ。とりあえず、ク
  レジット会社へは内容証明を出した方がいい」と言われました。


  大野さんは22年12月2日に内容証明を送りましたが、4カ月以上経過した現在クレジット
  会社からは返答はありません。また、支払い停止を指示した9万円は、23年4月4日に引
  き落とされてしまいました。クレジット会社としては、調査の結果本人のサインである
  と見なして引き落としたとのことです。


  クレジット会社に掛け合うと、担当者は、カードが本物で署名があれば決済する仕組み
  になっていると、通り一遍の説明を繰り返すばかりで全くラチがあきません。また、問
  題の店(バー)は、事件後から電話は繋がらず、店は消えているそうです。


  ◆こんなサインで本人確認ができるのか


  さて、そのクレジットカードと大野さんのサインを拡大したのが図Aです。そして、17
  万円の伝票への署名が図B、酔っていてうまく書けないので2回署名している。図Bに
  ついては、大野さんは署名そのものは自分がしたものと認めています。


  それはさておいても如何なものでしょうか。図Bの署名は、「大●宗治」の4文字中、
  かろうじて読めるのは姓の「大●」の2文字のみです。金融機関なら、このA・B二つ
  の署名を同一人と認めて支払いをするでしょうか。知人の銀行員は、当然支払えないと
  言いました。もし、銀行がこの程度の署名で支払いをしたとしたら「過誤払い」として
  訴えられても文句は言えないでしょう。
 
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  こちらをクリックしてください。画像で資料が見られます。
  資料A 大野さんのカードと署名を拡大したもの
  資料B 17万円の伝票への署名
  資料C 9万円の伝票への署名
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  私がプロの筆跡鑑定人として言えることは、図Bは「鑑定不能」であるということです。
  鑑定不能というのは、この乱れ切った資料では、本人とも別人とも言えないということ
  です。つまり、筆跡鑑定人としては認められない署名で、信任を受けたクレジット会社
  が引き落としてしまっているということです。


  ◆カード裏への署名は悪質店には無意味である。


  クレジット会社は、「悪用されることを防ぐためにカードの裏に署名をせよ」と言って
  います。つまり資料Aの署名は、本人確認のために記入することになっているわけで、
  顧客も当然それを期待して署名しています。それが、このケースでは全く意味を持たな
  い結果になっています。


  つぎに、資料Cは、大野さんが署名していないと主張しているものです。クレジット会
  社に「署名をしていないので調査してくれ」と申し入れたものです。しかし、23年4月4
  日の本人と認めて取り立てたというものです。


  つまり、資料Cと資料Bの筆跡は同一人の筆跡だということです。これは、筆跡鑑定人
  の立場から見れば到底納得できません。Cについては、署名していないもう一つの根拠
  もあります。それは、大野さんが認めている17万円の署名よりも、1時間以上も早い時
  間に署名したことになっていることです。


  「支払いであれだけ揉めて、ようやく署名したのに、それよりも早い時間に署名したな
  どということはあり得ません」。しかし、思い返してみると、「カードの有効性をチェ
  ックします」ということで、その時間にカードを渡していたそうです。どうやらそのと
  きに切られたようです。

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  こちらをクリックしてください。画像で資料が見られます。
  資料A 大野さんのカードと署名を拡大したもの
  資料B 17万円の伝票への署名
  資料C 9万円の伝票への署名
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  ◆クレジット会社は速やかに大野さんに返金すべきである


  新宿警察も典型的なぼったくりといい、しかも電話連絡も繋がらない所在不明の店に、
  一流のクレジット会社がこのような状態で金を支払っています。(少なくとも大野さん
  からは取り立てています)


  顧客である大野さんから、「身の危険を感じて止むを得ずした署名だから支払いはしな
  い。解約する」という通知を受けていながらです。さらに、9万円は本人がサインを否
  定しているのです。これが、顧客から信任を受けて活動する著名なクレジット会社に許
  されることでしょうか。


  大野さんは、今回のトラブルでクレジット会社の極めて不親切な対応や、部署名・担当
  名を名乗らず、責任者と連絡のつけられないクレジット会社の仕組みに翻弄されました。
  クレジット会社の、このような責任回避的な仕組みに強い不信感を持っています。


  大野さんは、クレジット会社への内容証明で、「カード会社の持つ社会的影響力や責任
  は大きく、このような犯罪の助長になるようなことがあってはならないと私は考えてお
  り、たとえ意図的に対応を遅らせているのでなくとも対応改善の必要があると思いま 
  す」と述べています。


  私は、たまたま筆跡鑑定上の相談を受けた筆跡鑑定人です、このクレジット会社は、対
  応の不適切さの謝罪を含めて即刻全額(26万余)を返済する義務があると思います。力に
  なってくれる弁護士さんはいないでしょうか。


  次回は、このクレジット会社のように、筆跡鑑定について対策を立てる必要のある生命
  保険会社の実例についてお伝えします。

                                      この項終わり


 
一般社団法人・日本筆跡鑑定人協会   株式会社・日本筆跡心理学協会 
代表 筆跡鑑定人  根本 寛(ねもと ひろし)
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